今回のコラムは下記の前回の腕振りの回の続きになります。
https://www.facebook.com/photo?fbid=4442260479154646&set=gm.588766148927495
「腕の重心」と「総合重心」が近いポジションにいる骨格になることが足を速くさせるためには必要である、ということは前回解説しました。
それを実現させる方法として2つのアプローチがあります。
それは腕が下がって「腕の重心」と「総合重心」が近づく、というアプローチと、
「総合重心」が上がって「腕の重心」に近づくアプローチです。
もちろんどちらも正しいですし、どちらもアプローチできたらベストではあります。
前回のトップスプリンターの話にもあるように腕が下がって、「腕の重心」が「総合重心」に近づく説明をしました。
よく、走るということを考えるときに【高い重心と低い重心どちらがいいんですか?】という議論をすることがありますが、基本的に重心は【高い位置にあった方がスプリントとしては速く走れる】ということが言えます。
重心が高い位置にあれば「腕の重心」に近いポジションになるので、腕を振った時に重心が運ばれやすくなるのは説明してきた通りです。
では「総合重心」を高くするにはどうすればいいのか、ということになりますが
これも以前のコラムで解説しているのでみてみてください。
https://www.facebook.com/groups/576141993523244/posts/578664406604336/
上記の骨格が一番総合重心を高くする要素としては重要なのですが、
それ以外だと筋肉も関係してきます。
何度も言いますが、重心というのは「重さの中心」なので重たいものがどこにあるのかで、
重心の位置というのは変わってきます。
「上半身がものすごくゴツい、だけど下半身はものすごく細い」
という方がいた場合
その方の重心は、当然ですけど「高い位置」にくるわけです。
重たいもの(上半身)が上にあり、そして軽いもの(下半身)が下にあるからです。
逆に言えば上半身が非常に細く、下半身が非常に太いという方がいた場合には、
重心の位置というのは低い位置になるということです。
これは考えてみたら至極当然なのですが、重さの中心が重心である以上、
重たいものがどこにあるのかで、
重心の位置というのは重たいものがある方向へ移動してくるということになります。
なので上半身が大きいと重心の位置は高くなり、下半身が大きいと重心の位置は低くなるのです。
ですから重心の位置を引き上げたかったら筋トレをして上半身を大きくしていく、
というアプローチも1つの手段になるのです。
実際にトップスプリンターを体つきを見てみると上半身が筋骨隆々な方が多いですよね。
そして足はというと、細く長くすらっとしている、そんな選手がほどんどです。
特に日本人選手はトップスプリンターが多い黒人の選手と比べると重心が低い方が多いです。
黒人の選手は足が細く、すらっと長く、だけど肩周りは筋骨隆々そんな方が多いです。
日本人は足が短く太く(黒人の選手に比べて)、上半身は割とほっそりという方が多いです。
体つきから見てもわかるように、どうしても日本人の選手の方が重心は低くなりがちになってしまいます。
以前解説したように生理弯曲の胸椎上部の弯曲を大きくすることで重心を引き上げるのも1つのアプローチですが、
上半身の筋トレなどをして、上半身を大きくしていくというのもスプリントを速くするアプローチの1つなのです。
次回は腕の振り方についても触れていきたいと思います^^

基本的に僕のアプローチは体の重心がより進みやすくなるのか否か、という点を大切にしています。
それが”速く走る”、という行為だからです。
何かの改善アイデアを施して重心がより前に進みやすくなるのであればその人にとっては正しい方向性になります。
変わらない、もしくは逆に重心が進みづらくなるのであればすぐやめる、といった具合です。
今日は重心の位置が高い方が良い、といった内容を伝えましたが
それがなぜなのか、というのをコラムとして書いていきます。
結論から言えばスプリント動作で足が降ろされた(接地された)時は体が少し前傾していますが、この時重心の位置が高ければ高いほど足の接地位置(足が降ろされた位置)を重心が超えやすくなるからです。
足の接地位置を重心が超えやすければ、それだけ速く走ることができます。
(足の接地位置を重心が超えやすければ、速く走ることができるだけではなく、走った時足の筋肉を消耗しにくくなります。)
重心の高さが足の速さを決めてしまうと言っても過言ではないくらい大切な要素です。
では脊椎がどのような形状をしていると重心の位置が高くなるのか、ということです。
脊椎は弯曲が大きい場所の方が弯曲が小さい場所や弯曲がない場所よりも(高さ辺り)の質量が大きくなります。
だから脊椎の上部である頸椎や胸椎の弯曲が脊椎の下部である腰椎の弯曲よりも大きい人の方が頸椎や胸椎(脊椎の上部)の弯曲が腰椎(脊椎の下部)の弯曲よりも小さい人よりも重心の位置は高くなります。
え?てか猫背だったらそういう骨格だよね?
ってことは猫背だったら速く走れるんじゃ・・・?という疑問が浮かぶこともあると思います。
猫背の定義にもよります(はっきりしていないので一概には言えないです)が、”猫背=胸椎の後弯”ということであれば確かに足は速い、と言っていいです。
しかし日本人で胸椎が後弯しているはほとんどいません。
猫背だ、という人は胸椎が後弯しているのではなく、脊椎の椎骨が後方へ傾いて(後傾して)積み上げられています。
このような人は胸椎を後弯させることができず体が後方へ倒れそうになるので(本人は無意識のうちに)胸椎のどこかを前屈させる(前に折れる)ことにより体が後方へ倒れるのを回避している場合が多いと僕は考えています。
高齢の方は猫背の方が結構いると思いますが、そのほとんどがこのパターンですね。胸椎が前に折れて(前屈して)いると腰椎を前弯させる(脊椎を生理弯曲させる)ことができず、重心が後方へ残りやすくなるため、短距離走を行う上では不利になります。
猫背のお年寄りの体型が速く走れる体型ではないことはよくわかるかと思います。
ちなみに生理弯曲というのは頸椎が前弯(前の方に弯曲)し、胸椎が後弯(後ろの方に弯曲)し、腰椎が前弯(前の方に弯曲)している状態のことです。
弯曲具合が大きい小さいは重心の高さの違いの図のようにあるのですが、脊椎が生理弯曲していることが運動を行う上では理想的です。